登録販売者の活躍の場は、もちろんドラッグストアだけではありません。第2類・第3類医薬品を取り扱うのはスーパーマーケットやコンビニエンスストアにとどまらず、現在ではホームセンターや家電量販店、免税店などでもみられます。
このようにニーズが拡大傾向にあると考えられる登録販売者ですが、ここでは具体的な将来性についてまとめています。
わが国の予算で多くを占める社会保障費、とくに医療費の増大は深刻な問題となっています。保険診療の改定や薬価の切り下げなどが実施されていますが、それ以上に伸び続ける医療費には対処しきれていません。そこで打ち出された政策の1つが「セルフメディケーション」。自分自身で健康を守るために病気や症状を判断しながら医薬品などを使用する、いわば自己治療のことです。
薬事法(現:薬機法)の改正によって、2013年からはインターネットやカタログ、電話で医薬品を販売できるようになりました。さらに2017年には医療費控除の特例として、期間限定ながらセルフメディケーション税制が施行されたところです。医薬用から転用されたスイッチOTC医薬品でも、医療費控除の対象になるということです(2021年12月まで)。
こうした流れが医薬品販売の増加につながることは容易に想像できます。登録販売者が活躍の場を増やすための追い風となるでしょう。
セルフメディケーションが推進されるといっても、専門知識を持たない一般の人が自分で薬を選ぶということにはリスクがあります。ここは薬剤師や登録販売者といったプロフェッショナルの出番です。
一般的なドラッグストアで販売されているOTC医薬品(市販薬)の約90%は第2類・第3類医薬品ですが、これは同じく市販薬を扱うスーパーマーケットやコンビニエンスストアでも状況は変わりません。
どんな業態であっても、市販薬を取り扱う店舗では登録販売者が欠かせない存在となります。セルフメディケーションが広く浸透している現在においては、その医薬品の専門知識に対するニーズは増え続けていくでしょう。
わが国において社会的な問題となっている少子高齢化は、医療費増大にも大きく影響しています。そこで厚生労働省は「地域包括ケアシステム」構想を打ち出し、医療や介護の連携で地域における在宅医療や介護サービスの提供体制の構築を進めています。そして、薬剤師や登録販売者にとっても在宅医療や介護サービスの現場が活躍の舞台の1つになることが考えられます。
要介護認定を受けている介護サービスの利用者さんは、さまざまな病気や障害などを抱えていることがほとんどです。利用者さんの多くが継続的な内服治療を受けているので、そこで登録販売者の専門知識が活かされます。
例を挙げると、内服薬とサプリメントの飲み合わせや効果の問題があります。今やテレビや新聞などでサプリメントの広告を見ない日はないほど広く普及していますが、内服薬との併用が望ましくない場合もあります。そういったアドバイスを行なうことができれば利用者さんも安心できるうえ、信頼関係の構築にもつながります。
在宅医療の現場では、処方薬をきちんと服用できているかどうかを管理する訪問薬剤師が増えてきています。これは薬に関する諸々のニーズが高くなっていることを表しているといえるでしょう。
こうした状況を重視して、すでにケアマネージャーや介護福祉士といった介護の専門職が登録販売者の資格を取得するという動きもみられているようです。医薬品の知識を持つ介護職は、間違いなく現場で頼りにされる存在になります。
登録販売者の資格制度ができてからまだ10年少々ですが、そのもととなる薬事法(現:薬機法)は毎年のように改定が繰り返されています。登録販売者も社会情勢の変化などによって、資格の維持や仕事内容が変わっていくことも十分に考えられます。もしかすると、登録販売者の資格だけではキャリアアップの実現が難しくなるかもしれません。
ドラッグストア業界であれば、登録販売者の資格を持った人が店舗管理者からエリアマネージャー、店舗開発担当などへキャリアアップを目指していく道があります。しかし、そういったルートが限られた枠であることも事実です。そこで、登録販売者の資格に加えてさらに別の資格を取得する、いわゆるダブルライセンスを検討してみてはいかがでしょうか。
一般的にダブルライセンスは、複数の資格を組み合わせることで仕事に幅を持たせ、活躍の場を増やすことを目的とします。よくあるのは行政書士と社会保険労務士、もしくは司法書士などです。そこまでではなくても、取得の難易度が高くない資格であっても組み合わせ次第では強い武器になります。介護職の方が登録販売者の資格を取得するというのも良い組み合わせです。
登録管理者であれば、ヘルスケア分野やビューティー&コスメ分野の民間資格などがおすすめです。健康志向の食事や美容、ボディケアなど、登録管理者の専門性を活かせる分野の資格であれば、将来に向けたキャリアアップの選択肢はずいぶん広がると思われます。